「上り坂での微調整」にとどまるか?-マクロ経済の見通し
■景気の減速感が鮮明化、中古住宅の成約ボリュームも勢いが鈍る
わが国の景気減速が鮮明になってきました。H14年1月を底として回復基調にあったのですが、このところ発表される各種経済指標は横ばいかマイナスを示すものが増え、首都圏の中古住宅成約件数においても、9月・前年同月比▲7.4% → 10月・同▲0.6%(出所:東日本レインズ「News Letter」、総合計ベース)と弱含んだ推移を示しました。Vol.1でもお話したように、中古住宅の成約ボリュームはマクロ景気の動きに影響を受けることから、売却や購入を検討されるお客様、さらには私ども不動産流通業者にとっても、景気が今後どう向かうかはとても重要なことだと思います。そこで、踊り場にある今の景気が、"微調整"を経て再び回復軌道に乗るか、それともここから後退局面に入るのか、を探ってみたいと存じます。
■各種経済指標は減速を示すものが急増、11月の景気の基調判断は軒並み下方修正
まず、現状を認識しておきます。内閣府が8日に発表した7-9月期GDP・2次速報(改定値)は、実質・前期比+0.1%(年率換算+0.2%)となり、同時に修正した前の期・4-6月期は同▲0.1%(同▲0.6%)とマイナス成長であったことが示されました。このことから、景気の総括的な指標であるGDPでは、4-6月期に踊り場入りしたことが鮮明になりました。また、7日発表の10月・景気動向指数の一致指数は、景気の分かれ目となる50%を3ヵ月連続で下回りました。このことは、テクニカルに景気後退のサインが点ったと判断され、弱気派のマーケット関係者は、早くも後退局面入りと考えているようです。個別の経済統計をみてみますと、個人や中小企業の景況感調査は4月ごろ、製造業の活動や設備投資の動きをあらわす鉱工業生産や機械受注、外需動向がわかる貿易統計は4-6月期がピークで、その後は一進一退もしくは弱含んだ推移となっています。
一方、個人消費は所得が伸び悩むなかで堅調さを保っており、これは、求人倍率・上昇や失業率・低下にみられるように雇用環境が急速に改善し、人々の将来への安心が背景にあると考えられます。なお、一般に雇用指標は景気に遅行するため、例えば企業の生産調整が長引くなどして雇用が悪化を示すようになると、消費の下支え要因が剥落し、減退を招く可能性があると考えられます。政府(内閣府)や日銀は、これらを総合的にみて毎月基調判断をコメントしています(内閣府:月例経済報告、日銀:金融経済月報)。11月は、内閣府・10月『堅調に回復』→『一部に弱い動き』、日銀・10月『回復を続けている』→『輸出・生産に一服感がみられるものの、全体として回復を続けている』と、そろって下方修正を余儀なくされました。
■一方、中長期的には回復基調は続いている
ところで、GDP発表の席で、竹中経財相は景気の現状認識を「上り坂での微調整」と表現し、日銀・福井総裁も、金融経済月報のなかで中長期的な回復基調は続いている旨を強調しました。バブル崩壊後、幾度となく立ち直りかけた景気が腰折れしたのは不良債権問題が燻り続けたためで、今回はある程度のメドがついたこと、さらにデフレスパイラルの懸念を乗り切ったこと等、景気回復のための根本的要因が解決したとの認識によって、両者とも中長期的な回復に自信を深めている様子を窺うことができます。
■先行きのポイントは、米国景気の立ち直り、IT底入れ、内需堅調持続で、なかでも米国・クリスマス商戦の行方に注目
さて、足許の景気がブレーキを踏むきっかけとなったのは、米国経済の減速(今年前半の個人消費スローダウン)による外需の落込み、IT関連の在庫積み上がり、とみられます。これに現状の減速要因を踏まえると、今後の景気は、①米国景気は再び巡航速度に戻るか、②IT関連調整の底入れはいつか、③内需は堅調を維持できるか、といった点を見極めることが大事になってくると思われます。そのなかで筆者が最も注視するのは、米国景気なかでも個人消費の盛り上がりがどうなるかでして、すでにスタートしたクリスマス商戦の行方がカギとなりそうです。今年の米国クリスマス商戦は、スタート時は百貨店やブランドショップが好調で、高額所得者や富裕層が牽引していると伝えられましたが、直近では、ディスカウントショップがスロースタートで、中・低所得者の財布の紐はしっかりしたままとのことです。判断が難しいところではありますが、
ブッシュ大統領が再選された際、政局安定による安心感から、米国国民の購買意欲がやや増したかなとの感触を得たこともあり、筆者といたしましては、後半の盛り上がりとともに好調を期待したいところです。IT関連の在庫につきましては、各企業が2000年におけるITバブルの教訓を踏まえ、在庫管理の精度を格段に向上させたことから、現在の在庫水準は常に適正かつ必要最低限の状態に保たれているようです。つまり、クリスマス商戦が予想の下限を少しでも上回った場合、在庫は適正水準を下回り、生産が活発化する構造にあるというわけです。
■中長期的な本格回復の流れは変らず、「上り坂での微調整」
以上のことから、米国景気は早期回復を果たし、わが国景気も再び外需に引っ張られる形で上向くシナリオを描くことができるのではないでしょうか。景気の動きに先行する株価は、ここ数ヵ月日経平均ベース11,000円を挟んで一進一退に推移しています。マーケットは、足許の景気減速に留意しながらも、もう少し先の本格的な底入れにも期待していると評価することができます。以上のことから、景気は中長期的には本格回復の流れが続いていて、現在は短期的な踊り場の状態にあると判断でき、まさに、竹中経財相の「上り坂での微調整」との表現がピッタリだと思っています。
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