車選びと住宅選びの違い
■住宅取得の不安はどこからくる?
仕事柄これまで多くの住宅取得者に接してきた私にとって、長い間とても気になっていることがあります。それは、これから住宅を取得しようとする人たちは、一体何をどうしたら良いのか分からないがゆえに、騙されるのではないか、失敗するのではないか、といった漠然とした不安を抱えているということです。
この漠然とした不安はどこからくるのでしょうか。
私は、そもそも「どういう住宅が自分に合っているのか分からない」というのが不安の根源ではなかろうか、と推測していました。そこで機会あるごとに、どんな住まいを探しているのですかという疑問を投げかけてきましたが、自分や家族は現在どんな暮らしをしているのか、したいのか、この先家族構成や家族の暮らしの変化はどうなっていくのか、そんな家族の暮らしにふさわしい場所はどこなのか、住宅の形態はどういうものなのか、といったことをきちんと整理して語れる人はほとんどいませんでした。
そうした経緯を経て、また自分自身の引越し経験(賃貸9回、持ち家3回)を踏まえて、これから住宅取得をする人たちに向けて、「どんなところでどんな住宅に暮らすことが自分に合っているのか分からない」という不安の根源を解消するための方法について私なりの考え方をこのコラムで12回にわたりご紹介したいと思います。
■住宅を選ぶということはどういうことか?
今回は多少理屈っぽいのですが、自分に合った住宅の選び方の前に、そもそも住宅を選ぶということはどういうことなのかを、車選びとの違いから説明していきましょう。
自動車には車種というのがあります。コンパクトカーとかセダン、ワゴンといったカテゴリーです。さらに車種別に標準価格が設定されています。また、サンルーフ付とか本革シート、オーディオといったインテリア・エクステリア、安全性や排気量、馬力といった基本性能、燃費といった比較項目があり、実際に試乗することにより実感値を持って比較検討し自分にとってより良いと思う車を絞りこんでいくことができます。
一方住宅の場合はどうでしょう。
車種に対応するのはファミリー向け3LDK、共働き夫婦向け2LDK、シングル向け1LDK、といった間取りタイプの住戸構成ということになります。標準価格は販売価格。インテリア・エクステリアに該当するのが外観デザインや共有スペース、住戸内の仕様・設備、基本性能とは耐震・耐久、遮音性等構造に関すること、燃費に該当するのは維持・管理費ということになります。
比較項目自体は住宅も車も一見共通しているように見えますが、決定的な違いがあるのです。
車は試乗して、先に述べた項目で比較検討し、自分がこれだ!と思うものに実感の伴う選択ができるのですが、住宅は比較検討ができない商品なのです。
なぜなら、住宅には土地が付随していて一体のものとして選ばなければなりません。しかもその土地はひとつとして同じものがないのです。特有の地形を持つ唯一無二の土地の上に住宅は建っているため、項目を横並びで比較するには条件が違いすぎて検討ができないのです。もっといえば、住宅は土地の形状や隣地との関係、周辺の状況によって建物の形態は7、8割がた決まってしまうほど、土地の有り様つまり立地に大きく左右されるものなのです。
ここが北海道でも九州でも同じものが手に入る自動車とは根本的に違うところです。住宅は本体より立地のウエイトが高いにもかかわらず、千差万別で横並びの比較ができないのです。
■住宅・立地は出会うもの、巡り合うもの
したがって住宅・立地は比較検討するものではなく、出会うもの、巡り合うものというのが私なりの結論です。そして良い出合い、巡り合いのためには、多くの住宅・立地を見て迷うプロセスをたどることが大切です。そのためにはまず、自分にあった住宅・立地とは何かという基準が必要になってきます。
そこで次回からは自分に合った住宅・立地に出会うための基準や出会いの方法についてご紹介していきます。
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