どんな立地を選ぶかで生涯コストや生活満足度は異なる
■通勤ラインを選ぶことは、あなたの生涯収支を決めることにつながる
30代で多くの人が住宅を取得するわけですが、どこに住むかを決めることは、実は定年までの30年間の自分の時間と自分が稼ぐお金を立地と住宅に投資する一大事業であると言い換えることができます。
サラリーマンであれば生涯に稼げるお金は業種・職種・出世の度合いによって多少は異なるものの一定の範囲内に限られており、できれば有効に活用したいとは誰しもが思うところです。
一方、毎日会社と自宅を往復する振り子運動が人生そのものであるサラリーマンは、通勤時間は無償で、会社に提供しているともいえます。時間だけが人間に平等に与えられた資源ですから、通勤時間は極力抑えて、その分を家族とのコミュニケーションや、勉強や趣味、スポーツにあてることでより豊かな暮らしを実現させたいものです。またキャリア志向の人であればオフィスでの執務時間により多くの時間をあてたいところです。
住宅取得はお金と時間の投資だと考えれば、可能な限り、高い生活満足度と資産性を確保したいところです。そして投資効果の重要な鍵をにぎるのが通勤ライン選びというわけです。どの沿線のどの駅に投資すべきか、私が考える投資判断基準は「通勤時間コスト」、「生活コスト」、「新築マンション価格維持率」そして「新築マンションPER」です。
「通勤時間コスト」とは、自分の給与を時給換算し、毎日の通勤時間にいくらかかっているのか、つまり会社にいくら提供しているのかを見るものです。
「生活コスト」とはその沿線・駅の該当県における平均家計費から毎月かかる生活費を見るものです。県によって生活費は意外に差があるものです。
「新築マンション価格維持率」とは築10年目に新築時の価格がいくらに目減りするのか、という資産性を見るものさしとなります。
「新築マンションPER」も資産性を見るものさしでマンション価格(坪単価)÷月額賃料(坪賃料)×12で計算します。PERが低ければ収益性が高く、反対に高ければ収益性は低いということになります。
それでは具体的に新橋に勤務先がある人が、都営浅草線・北総線を利用して印西牧の原に3500万円、120㎡のマンションを取得した場合と東海道線・南武線を通勤ラインとして絞り込み、武蔵小杉に3820万円・62㎡の3LDKを取得した場合の生涯コストを計算してみましょう。
結果は武蔵小杉の倍の広さである120㎡のマンションが買える印西牧の原ではありますが、生涯コストは746万6200円高くついてしまうという結果となりました。何より通勤時間コストが武蔵小杉より1529万4240円多い、3441万2040円かかってしまうのがコスト高になってしまう最大の要因です。たとえ120㎡もの広い住まいであっても通勤に時間がとられてしまい、ゆっくりと家でくつろぐ時間が少なくなってしまいます。
また、30年後の資産額も武蔵小杉より672万円多く目減りしてしまいました。
なるべく短い通勤ラインを選び、通勤時間を短縮しておいたほうが広い住宅は手に入りにくい面がデメリットではあるものの、資産面、コスト面また家族との団欒など生活面での満足度は高くなるのではないでしょうか。
さらに新築マンションPERでみても武蔵小杉のほうが収益性に優れているというデータが出ています。
住宅の広さを求めて通勤時間を長くするより、狭さに挑戦し可能な限り通勤時間を短くするほうが経済合理性は高いという結論です。

■街選びはあなたの生活満足度を左右する
以下の表は主なライフステージに相応しい街のタイプを整理したものです。ライフステージと街のタイプがうまくマッチしていれば基本的な生活の満足度は高まりますが、ミスマッチの場合は生活がしにくく、転居せざるを得ない事態に陥ることもあります。
またライフステージに加えて自分のライフスタイルに合っているかいないかで生活の楽しさ、豊かさといったプラスアルファの満足度が違ってきます。
そこで私の住宅履歴を例にあげ、住む街によって異なる生活満足度について触れてみたいと思います。
ここに整理したのは主に私が独身社会人10年目前後のライフステージに位置していた時代の住宅履歴です。我ながらよくも引越しを重ねたものだと感心してしまうほどの転居回数です。裏を返せば街と自分の生活のミスマッチが多かったということになります。
私が大失敗だったと思うのは、郊外型の街である三郷の大規模開発のニュータウンに暮らしたことです。駅の近くには小・中学校があり、周辺はまだまだ自然が残っており、子育てに適した住環境の新興の住宅地でした。当然住んでいる人の多くは、夫は一般的なサラリーマン、妻は専業主婦、子供は2人でそのうち1人は小学生といった典型的なファミリーでした。したがってその街はこうした人たちを中心に機能しており、クリーニング店は夜7時まで、スーパーの営業時間は夜8時まで、飲食店もせいぜい9時までで、残業を終えて10時過ぎに帰宅する私は、シャッターのしまった暗い商店街を通り抜けて、家路につくしかありませんでした。もちろん娯楽施設等はいっさいありません。両隣の駅も同じような環境で、途中下車もままならず、でした。社会人10年目・独身というライフステージの私には完全にミスマッチな街でした。生活は毎日のことなので、すぐに根を上げてしまい引越しを余儀なくされてしまいました。住宅価格が急上昇している1988から89年の頃で、私が買えるマンションをあせって探した結果、ライフステージに合わない街の物件を選んでしまったのです。
このことに懲りた私が次に選んだ街が都心型の勝どきでした。勝どきは独身の女性でも気軽に入れる飲食店や深夜営業のスーパーがあり日常生活に不便を感じることはありませんでした。クリーニングのデリバリーサービスもあって、私のような仕事中心の独身のライフステージに位置する者には、とても嬉しい生活サービスでした。また私のライフスタイルは映画、演劇、コンサート好き、釣りもやりますし、ちょっとしたハイキングにも気軽に出かける、どちらかというと行動派のタイプです。単なる遊び好きともいえますが。
勝どきの生活圏内には銀座という、私のライフスタイルを満足させるには十分な機能を備えた楽しい街が控えていました。更に歩いて10分くらいのところに月島があり、商店街の人たちが主催する釣りクラブがありました。勝どきは隅田川の河口で東京湾に近く、釣りに適した環境にあり、私はここで昔覚えた釣りを再開することになりました。
平日は寝る時間を除けばほとんどの時間を仕事に費やす生活を良しとし、週末のわずかな自由時間は映画を見たり、釣りをしたり可能な限り有効に活用したい欲張りな私には勝どきは大正解の街でした。私が住んで満足度の高かった街は都心型タイプだったわけです。反面、満足度が必ずしも高くなかったのは郊外型もしくは中間型タイプでした。勝どきに住んでみて、やっと自分に相応しい街を自覚するようになったわけです。以降、私はシングル時代に更に2回引越しをしましたが、何れも都心型でした。
シングルの暮らしに向く街の条件を改めて列挙してみると、都心への交通アクセスが良く、電車で通勤しやすくできれば道路交通の便も良いところ。街のイメージが良くて、深夜まで開いている生活に便利な施設が充実し、おしゃれな店が立ち並ぶところ。できれば街のイメージやモラル・マナーが良いところ、となると都心型タイプが一番適切ということになります。友人が近くに住んでいるからとか、住宅バブルの到来で私の資金力で買えるのは、この地域のマンションくらいしかないから等々、自分の暮らし以外のことを優先させての街選びは私のように失敗する可能性が高いように思います。
現在の私は、脱子育てカップルの位置に属するライフステージに入りつつあります。リタイア後の暮らしを視野に入れて、自分に相応しい街を考えるステージに入ったわけです。私のライフスタイルを考えると自然の豊かな田舎で本格的な釣りやハイキングがしたい、でも、時にはコンサートや観劇も楽しみたい。欲張りな暮らしが実現できそうなところといえば、都心に1.5時間以内で行けるトカイナカ型の立地が良さそうです。
どんな通勤ライン(大立地)を選ぶか、どんな街(中立地)を選ぶかで、コストや資産といった収支面や、生活の満足度には、かなりの違いが生じることを念頭においておけば自分に相応しい住宅に巡り合う確率が俄然高まるように思います。


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