住宅を作る側の立地の見方
■街のタイプは4つある
今回は住宅開発のプロデューサーである私の立地の見方をご紹介することにします。私は立地を大・中・小に3分類して見ています。大立地は住む場所を中心に徒歩20分から30分圏内の学区の単位をさします。中立地はもう少し範囲を狭くして15分圏内の街の範囲、小立地は5分圏内のご近所です。
マンションの開発用地が決まると、20分から30分圏内の主要沿線、幹線道路、川・海・山といった地形上の特色や象徴的な商業施設、公共施設を地図を広げて把握し、特色を整理します。その上で、そのマンション用地を中心に徒歩15分圏の中立地である街の性格を分析します。その街がどんなライフステージに相応しいかを見極めるのが目的です。そのために、私は街を4つのタイプに分類して大まかな性格をつかむようにしています。
私が考える一般的な住むための街のタイプは、都心型、中間型、郊外型の3タイプです。東京を例にあげて説明すると、都心型は都心3区(千代田、中央、港区)、都心山の手エリア(文京、新宿、渋谷区)、城南エリア(目黒、品川、大田区)です。
中間型は城西エリア(中野、杉並、世田谷区)、城北エリア(板橋、北、豊島、練馬区)、
城東エリア(台東、墨田、江東、江戸川、葛飾、足立、荒川区)が該当します。都心まで30~40分の交通アクセスが便利で、充実した日常生活がおくれる街です。
郊外型は武蔵野エリア(三鷹、武蔵野、調布、狛江、小金井市)、東京西武沿線エリア(清瀬、東村山、東久留米、西東京市)、多摩東・多摩ニュータウンエリア(小平、国立、国分寺、府中、多摩、稲城市)、多摩西エリア(立川、八王子、日野、昭島、福生、武蔵村山、東大和、青梅、羽村市、瑞穂町)があげられます。子育てを中心とした日常生活をおくるには、生活利便性と自然環境の良さが同居した街といえます。
私なりの考え方で、各ライフステージにあう街のタイプを分類したのが以下の表です。こうして分類した街のタイプとライフステージを対応させることで、シングルに適した都心型、中間型のタイプであれば1LDK、40㎡から50㎡台、ファミリーに適した郊外型、中間型のタイプであれば3LDK・4LDK70㎡以上というように広さや間取り、設備等の骨格を決めていくのです。

■ご近所に住む人のライフスタイルを見抜く
街のタイプを把握し、どのライフステージに相応しいかを見極め、広さや間取りなどの住宅の骨格をつくると、次にマンション用地を中心に徒歩5分圏内の小立地であるご近所の性格を分析するために住む人たちのライフスタイルを観察します。この観察手法は住宅のコンセプトや基本プランを検討するために行うマーケティング調査の一環です。
具体的には複数のポイントで、ご近所に既に住んでいる人たちを観察し、掴んだ特色から中立地・街で分析したライフステージが適切かどうかを確認すると共に、ライフスタイルを想像するというものです。なぜ、既に住んでいる人たちなのか、というと100戸程度の規模のマンションであれば、地元需要を6.7割程度見込むのが一般的な住宅開発のセオリーになっているからです。したがって地元に暮らしている人たちのライフスタイルを観察し、そのスタイルに相応しい住宅のコンセプトや基本プランを設定すれば、売れ行きを促進することにつながるからです。
私の調査ポイントは平日は朝の通勤時の駅改札、既存住宅地、駅前不動産会社、週末は地元の人でにぎわうレストラン・カフェ、販売中のマンション、一戸建てのモデルルーム、モデルハウス、公園などです。どんなことを調査するかは表に整理していますが、駅の改札口を例にとると、通勤電車の乗降客の、男女比率、年代別比率、服装、もち物、体型等を観察します。これらを大雑把にメモしながら、40代の男性の比率が高く、30代の女性の比率が少ない場合は妻が専業主婦もしくは地元でパート勤めをする、子育てファミリーが多いご近所ではないかと、ライフステージの傾向を想定します。また、週末のカフェでくつろぐお客に小学校入学前の子供を連れた家族を何組も確認することで、ここはやはり子育てファミリーが主役のご近所で、日当たりや採光、通風、夫婦や子供との会話が弾む広いセンターリビング、安全性、防犯性を重視する人たちが多いところだと、想定するといった具合です。
また、40代の男性の服装が真夏でもスーツにネクタイ、靴の底が歩きやすいラバーであれば、大手・中堅規模の企業に勤務する営業職が多く、年収は500万円以上で3000万円クラスの住宅取得能力は十分にあるはずだとか、休日は家族とドライブすることが多いというライフスタイルではないかと想像します。そしてご近所のマンションの駐車場や一戸建ての駐車場を見て回ると、ワンボックスカー、ワゴン車の比率が高く、アウトドアを好むライフスタイル像を描き、オートキャンプのセット、ゴルフ、釣り竿などが収納できるスペースを玄関脇に設ける必要があるなどと考えるわけです。
このように、住宅を開発する側はご近所に住む人たちのライフステージ、ライフスタイルを分析し、より魅力的な住宅開発のディテールを決めていくのですから、買う側は逆の視点からみて、その街やご近所と相性がよければ、そこで巡り合う住宅との相性もそう大きくは、ミスマッチしないということになるのです。
これはあくまでも住宅を造って売る側のマーケティング手法ですが、買う側の一般生活者にも応用できることだと考えます。相応しい通勤ライン上に相応しい街を絞り込んだら、自分のライフステージにあっている街のタイプであるかを確認し、更に実際に以下の表にあるような調査ポイントでご近所を観察してみてください。自分と同じようなライフステージの人が多いのか少ないのか、自分のライフスタイルと共通する人がいるのかいないのか。そんなことが実感を伴って分かってくれば、あなたに相応しい立地と住宅に巡り合うことができるのです。

■街のタイプ、ご近所の性格の違いが住宅開発に特色をもたらす
街のタイプやご近所の性格によって、販売される住宅の特色やアピールポイントの傾向は大きく異なっていることはこれまでの説明でご理解いただけたと思いますが、念のため、実際にそれらの違いが住宅にどう反映するのかを見ていきたいと思います。最近販売されたマンションを例にその違いを明らかにしてみましょう。
まず、都心型はショピング施設や飲食店、24時間対応のスーパー・コンビニ、医療施設、リラクゼーション施設等暮らしに必要な機能が集中しており効率よく活用できるところが最大の強みです。
したがって都心型の街を必要とする人は、平日は残業で帰宅が午後10時過ぎ、場合によっては週末も仕事というキャリア志向の多忙なビジネスパーソンです。彼らは平日、仕事以外の生活に時間を割くことはほとんどできません。もし時間があれば、明日もクリエイティブな仕事ができるよう短時間に心身の疲れを癒したり、質の高い睡眠を得ることを優先させます。また、週末も仕事が入ることが多いので、たまにフルに休める日ができたら、できるだけ時間を効率的に使って楽しもうとしますから、映画館やしゃれたレストラン、スパ、ショッピング街が近くにある都心での暮らしを望みます。
また、都心型のマンションの間取りはシングルやDINKS向けの1LDK、2LDKが中心です。帰宅後短時間にリラックスできるようお風呂にミストサウナがついていたり、日常生活をフォローするコンシェルジュサービスなどが用意されていたりもします。
一方、郊外型の街の特色はゆったり、広々暮らせるところにあります。そこで、子供が乳幼児期から小学校に通う子育てファミリーをメインターゲットにしたプランが多く企画されます。都心から離れている分地価が安いため、家賃並みの返済で手に入る100㎡超の4LDK、約20畳もあるLD、収納力たっぷりのクローゼット、南向きで日当たりのよい部屋等、何かと手狭なアパート、社宅暮らしのファミリーにとって、暮らしの質が一挙に向上するプランが色々用意される傾向にあります。
中間型は文字通り、都心の便利さと郊外のゆとりを併せ持った2LDK、3LDKのプランづくりが行われます。今は共働きだけれど、数年後には子供を持ちたいといった若いカップルを対象としたプランが提案されるようです。
街やご近所の特色はこのように、マンションプランの特色に大きく反映されるものです。生活圏となる街、ご近所を絞り込めば、あなたが巡り合えるマンションの大まかな傾向はおのずと決まってくることがお分かりいただけたと思います。

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