共働きカップルに向くマンション
1.通勤路線は妻優先、勤務先から45分が目安
共働き夫婦の場合、夫と妻が別々の勤務先に通うケースも多いはず。その場合、私は夫より妻を優先させたほうが家庭生活はうまくいくと思います。少しでも妻の通勤時間を短縮することで家事の時間を捻出するように考える方が合理的です。夫が家事へ参加する頻度は以前より高くなったとはいえ、まだまだ妻の負担は肩に重くのしかかっている現実があるからです。
妻の勤務先から自宅までの乗車時間は片道30分、ドアツードアで45分程度に抑えることができれば理想的です。極端に混み合う通勤ラインは避けましょう。仕事で疲れ、その上通勤の往復でも疲れてしまうと、家事どころではなくなってしまいます。また生活するのに必要な銀行・スーパー・ドラッグストアといった施設が通勤路線の駅に集積していることも大事です。自宅と勤務先との往復のついでに色々な家事が済ませられる、というのも重要なポイントです。家事が行き届かなくなると、夫が不満を漏らし、その分妻はストレスを溜めることになります。これが高じると妻が仕事を続けられなくなるとか、夫婦仲が悪化することも出てきます。こうなると何のためのマイホームかとなってしまいます。
ところで、妻の家事労働はいったいいくらに評価されるものでしょうか。経済企画庁が1998年に発表した家事労働に対する年間評価額では30代の有職主婦で約250万円となっています。これは当然夫が負担すべきコストといえます。実際に妻に家事報酬を払っている夫はほとんどいないので、みなしコストになるわけですが、できればこのみなしコストは極力抑えたいところです。そのためには、妻の家事負担が極力削減される通勤路線を選ぶのが基本中の基本となります。
2.街を選ぶなら「都心型」か「中間型」
平日は仕事中心、休日は二人の時間を楽しむという共働き夫婦の日常生活は、シングルと基本的には変わりません。したがって前回で述べた利便性が高く、イメージの良い「都心型」の街を選ぶことをお勧めします。が、ゆくゆくは子育てをという計画をお持ちのご夫婦には、次のライフステージを先取りして、子育て環境の充実した「中間型」の街をお勧めします。妻が出産後は子育てに専念するため専業主婦でいたいという希望を持っている夫婦であれば、夫の収入だけで住宅ローンの返済も家計もまかなう必要がありますので、住宅価格相場が都心よりも安く、日常生活が便利な「中間型」の街を予め選ぶほうが賢い選択といえるでしょう。東京圏で代表的な「中間型」の街は、城東(足立・葛飾・荒川・台東・墨田・江戸川・江東区)、城西(中野・杉並・世田谷区)、城北(板橋・練馬・北・豊島区)、川崎(川崎・幸・中原・鶴見区)、田都・東横線沿線(高津・宮前・青葉・都筑・港北・緑区)、埼玉中央南(さいたま・川口・戸田市)、千葉西(浦安・市川・船橋市)の生活圏内にあります。その中でも教育環境を重視し、子供が安全に暮らせる地域という絞込みをしていくと城西、田都・東横沿線、埼玉中央南のさいたま市、千葉西といった生活圏の中にある街がお勧めといえるでしょう。
なお、出産後も共働きをつづけ、二人でキャリアを積んでいきたいと考える夫婦なら、ダブルインカムですから多額のローンを組んで都心に広めの住宅を取得することも可能でしょう。そうしたカップルには、仕事も日常の生活も便利でかつ教育環境や安全性を加味して「都心型」の街を選ぶという選択肢も考えられます。東京圏で代表的な子育て環境の良い街は都心3区(千代田・港・中央区)、都心山の手(文京・新宿・渋谷区)、城南(目黒・品川・世田谷区)などが挙げられます。
こうした街を対象路線の中からピックアップすれば、共働きカップルに相応しいマンションの沿線・駅の範囲が絞り込まれてきます。絞り込まれた沿線・駅は複数あるはずです。ただし、ここまでは理屈による絞込みです。この後は地図を片手に候補となる駅の周辺を歩き回って、自分の肌に合うかどうかを確かめるくらいの努力は必要だと思います。知らない街を散歩がてら探検するのは、結構面白いレジャーになるものです。
3.子育て志向なら、「元お屋敷町タイプ」か「英国式田園都市タイプ」のご近所
街が決まれば、更にその街の中でどんなご近所に絞り込むか必要になってきます。共働きカップルに向くご近所は、将来子供を持つか、持たないかで異なります。持たないというカップルは、社会人シングルと同じご近所である「下町・商店街タイプ」「未来志向型再開発タイプ」「街中タイプ」が向いていますので、前回のコラム(→ vol.9. シングルに向くマンション)をご参照ください。ここでは、将来子供を持ちたいカップルに向く、「元お屋敷町タイプ」と「英国式田園都市タイプ」についてご説明することにします。
「元お屋敷町タイプ」のご近所は「都心型」の街に多く存在します。もともと広大な武家屋敷跡地を細分化してマンションに転用されたものが多く、歴史的にそれなりの住環境が維持されているご近所といえます。町内には、下世話?な生活利便施設などはありませんが、周辺には古い歴史を誇る商店街が必ずといってよいほど存在しています。典型的な例が南麻布の元お屋敷町に対する麻布十番の商店街といった関係です。老舗の魚屋、肉屋、八百屋などがスーパーに負けずに営業しており、場合によっては御用聞きのサービスも残っていたりします。またこのタイプのご近所には伝統的な公立、私立の小・中・高が存在することが多く、教育環境が整っているのです。番町、麹町、四谷、麻布、広尾、高輪、白金が典型でしょう。教育重視のファミリーにとってはブランド化したご近所ですが、値段が高く誰もが住めるご近所ではありませんので、一般的には第一種中高層住居専用地域を目印に探すとよいでしょう。
このご近所はマンションを中心とした住宅地であるため、都心に近いにもかかわらず、公園が点在し緑も案外豊かで、嫌悪施設や娯楽施設もなく閑静な住環境が手に入りやすいところです。このご近所には超高層住宅は建ちませんので、住戸内の住み心地も日照、通風、採光、プライバシーはある程度確保されるよう配慮されたマンションが多く、騒音、空気汚染にもあまり悩まされずに済みます。また、元お屋敷町というご近所の特性を反映してマンションの外観は重厚で高級感を出すような演出がなされる傾向にあります。半面スタイリッシュなデザイナーズマンションやコンクリート打ち放しの斬新さを強調したマンションは少ない傾向にあるようです。
「英国式田園都市タイプ」も子育て志望カップルに向くご近所ではありますが、このタイプのご近所は「中間型」もしくは「郊外型」の街に多く存在しており、勤務先の集中する都心からは距離が遠く、妻の側からみての利便性が悪いと考えます。仕事と家事・育児を両立させたい妻であれば肉体的、精神的にも負担が大きくなるように思います。一方、子育て中は専業主婦に転身するというカップルにとっては、理想的な子育て環境といえるでしょう。私の職場の後輩で子育て志望のカップルが、結婚直後に田園都市線のあざみ野にマンションを買い、3年後に待望の赤ちゃんが誕生しました。しかし「郊外型」の街にある「英国式田園都市タイプ」のご近所を選んだために、子供の保育園のお迎え時間に間に合わない、自宅周辺にコンビニがない等、日々の暮らしが結構不便で、傍で見ていても大変さが伝わってきました。専業主婦であれば何の問題もないご近所なのですが、働く妻の場合は要注意です。

4、共働きカップルに向くマンション
共働きカップルに向くマンションを考える上で、将来子供を持つ意思があるかないかで望ましいマンションのコンセプトは変わります。「子育て志向のない共働きカップル」に向くマンションは、基本的な部分がシングルと共通しますので前回のコラム(→ vol.9. シングルに向くマンション)をご参照いただくと共に、カップルならではのマンションコンセプトについて以下に付け加えます。
このカップルに向くマンションのコンセプトは、「誰にも邪魔されないプライベート空間」です。たとえ夫婦といえども、お互い仕事を持つ自立した個人ですから、それぞれ読書や趣味を楽しんだり、持ち帰った仕事をこなす、プラスαのスペース(スタディルームなど)があった方がお互い気兼ねせずに自分のやりたいことが出来て、かえって夫婦関係は良好に保てるでしょう。2LDKの間取りであれば1室を夫もしくは妻の書斎にあてるとともに、リビングの一部をインテリアの工夫により、もう一人の書斎コーナーにできるような間取りが望ましいと思います。
また、それぞれのプライベートな生活を大事にした上で、夫婦や友人、両親とのコミュニケーションも重視するのが今どきのカップルです。したがってコミュニケーションし易い間取りかどうかも需要なポイントです。
ところでコミュニケーションがもっとも活発に行われるのはどんな場面かご存知ですか。実は食事中なのです。リビングのソファに座っている時間ではないのです。ということはキッチンとダイニングの関係が大切になってきます。作る人と食べる人が顔を見ながら話しができるよう、フルオープン式もしくはカウンター式のキッチンが望ましいでしょう。またキッチンのすぐそばになるべく大きなダイニングテーブルが置けるようなスペースを確保したいものです。低めのテーブルと椅子であれば敢えてソファは置かず、食事中心のLDにしてしまうというのもひとつの手だと思います。ついでに来客の際、洗濯物や洗剤の置いてある生活臭あふれる洗面所を使用しなくても、トイレの中にちょっとお化粧直しができるような洗面台が設置されていると意外に便利なものです。
最後に忘れてはならないのが家事効率を高める設備機能。共働きの妻は仕事に追われ思うように家事の時間がとれません。そこで、雨の日でも洗濯物が干せる浴室乾燥機、浴室内の床・天井が乾燥しやすいカラリ材の採用、6時間経ってもお湯がさめない魔法瓶浴槽、お掃除が楽でクリーンなIHクッキングヒーター、ディスポーザーなど、家事の手間がかからない機能の備わった設備を選ぶのは、今や働く妻の常識でしょう。
子育て志向のあるカップルに向くマンションは基本的には子育てファミリーに向くマンションと共通しています。次回のコラムでご紹介したいと思います。
<まとめ>
最後に共働きカップルに向くマンションの条件を以下にまとめておきます。
1.夫婦円満な家庭のためには妻の通勤を優先。ドアツードア45分内で路線を決める
2.街選び、ご近所選びは将来子育てする、しないで異なる。する場合は、中間型の街に元お屋敷町タイプ・英国式田園都市タイプのご近所を探す。しない場合はシングルと同じ街、ご近所を選ぶ。
3.夫婦といえども各自のプライベート空間を持ち、趣味を楽しんだり勉強ができるような暮らしを目指す
4.家事効率を高める高機能な設備機器で、働く妻の負担を軽くする
以上の条件を満たすマンションに巡り合うことができれば、入居後の満足度は相当高くなること、請け合いです。
|