第5回不動産WEB講座「相続と相続税の仕組み」
ファイナンシャルプランナーが独自の視点で、不動産にまつわる様々なテーマをわかりやすく解説する「不動産WEB講座」。連載第5回は、「万が一」に備えて日頃から頭の片隅に置いておきたい財産移転の知識、相続とその課税のしくみについて特集します。【毎月更新】
■相続はなぜ「トラブルのもと」なのか
相続という言葉からは、争いごとを連想される方もいるのではないでしょうか。実際、万が一のときの家庭(親族間)の財産移転の方針についておろそかなままでいると、やがてご不幸があったときに相続はトラブルのもとになりかねません。早い時期から話し合いをし、準備をしておくことが望ましいでしょう。

まず、“誰が相続人(財産を受け取る人)になるのか”について。これには『配偶者』のほか、優先順に『子』『親』『兄弟姉妹』など一定の範囲があり、民法で詳しく定められています。たとえば、ここでの『配偶者』とは戸籍上の夫・妻のことです。社会保険などとは違い、相続の上ではいわゆる“事実婚”は認められていません。

『子』の場合、前夫・前妻との間に生まれた子や養子も相続人に該当します。また養子(普通養子)は、実親・養親どちらの相続人にも数えられます。『子』が亡くなっている場合には代襲相続人として『孫』が、該当の『兄弟姉妹』が亡くなっている場合には『甥・姪』が…と、いうように。もうこの話を読んだだけでもトラブルが生じやすいことがご理解いただけるかと思います。

特に夫婦間に子がいない場合や、夫婦の一方、又は、双方が再婚である場合など、一度専門家に相談しておくことをお勧めします。

また、不動産の財産移転時に「共有」にすることには、注意が必要です。次の相続のことも考えたうえで、財産移転をすることが重要です。
[図1]

法定相続人の

「範囲」・「順位」・「法定相続分」


■知っておきたい「相続時精算課税制度」と相続・贈与の基礎控除額
相続税とは、相続(=無償の財産移転)により発生する課税のことです。原則的に金銭価値のある相続財産、つまり不動産や銀行預金から絵画・骨董などの家庭の動産まですべてが課税対象となります。ちなみに遺族によって行われる相続による財産移転に対し、生前に互いの合意のもとで行われる「贈与」による財産移転という方法もありますが、課税のしくみはどちらも相続税法の中で定められています(贈与税は相続税の補完税という位置づけです)。

贈与税と相続税が一体化した制度として「相続時精算課税制度」が近年制定されました。これは贈与者が亡くなったとき、相続財産に贈与財産を加えた金額を基に計算した相続税額から、贈与税を差し引いた額を相続税額とする制度です。現時点で、その贈与に対して2500万円という大きな特別控除枠があるのが特色ですが、その利用には、十分な検討が必要です。
①『贈与者が65歳以上の親』②『受贈者が20歳以上の子・代襲相続人』という2要件※1を満たす場合は、従来の課税(暦年課税)で納めるか、相続時精算課税で納めるかを贈与税の申告時に選択できます。ただし、後からの取り消しはできませんのでご注意ください。

相続税の計算においては、「基礎控除額」※2以下ならば税金はかかりません。その他にも、自宅等の財産評価の特例や、被相続人の生命保険金や死亡退職金にも非課税の制度があり、さらに未成年者控除や障害者控除といった制度もあります。したがって、個々のケースにより相続税額は変わってきます。なお故人の財産は、亡くなった日の時価で評価されます。

※1~2税制改正により、新たな特例や規定の変更がある場合もございますのでご注意ください。
※住宅資金目的での贈与の特例も近年制定されています。
[図2]相続時精算課税制度

相続時精算課税制度

[図3]相続税・贈与税の基礎控除額

基礎控除額

■相続手続きは「期限」が大切
相続でとかく大変なのは確認作業です。その故人の出生時から亡くなるまでの戸籍謄本を取り寄せて婚姻記録や出生記録を確認する必要があります。それらが一ヶ所に記録されているとも限りませんので、取り寄せるだけでも相当な時間を費やす場合があります。相続発生から納税までには様々な期限が設けられていますのでご注意ください。

相続税の納付は(贈与税の納付の場合も)、個人所得税とは別に自己申告※1すること、そして基本的に現金一括納付であることが原則です。「相続放棄」と「限定承認」※2の申し出は亡くなった日の翌日から3ヶ月、相続税の申告が同様に10ヶ月までとそれぞれ決まっています。その間にも通夜、葬儀、法要等々やるべきことは多くあります。円満な相続の鍵は、やはり前もっての意識づけ、親族内での話し合いにあるといえるでしょう。

※1 課税額から基礎控除額を引いた額がゼロまたはマイナスの場合、申告は不要です。(特例を使う場合は申告要)
※2 相続した財産の範囲内のみで被相続人の債務を負う仕方。
[図4]

死亡から相続税納付までの主なスケジュール

今回の講師:ファイナンシャルプランナー 三村 明
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